著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
指導力のある教師の指導行為の最大公約数
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2023/3/16 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『指導力のある学級担任がやっているたったひとつのこと』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、即戦力となる若手教師の育成、主に小中学校現職教師の再教育にかかわりながら、講演や執筆を行う。
主な著書に、『個別最適な学び×協働的な学びを実現する学級経営365日のユニバーサルデザイン』『個別最適な学び×協働的な学びを実現する学級経営』『アドラー心理学で考える学級経営 学級崩壊と荒れに向き合う』『アドラー心理学で変わる学級経営 勇気づけのクラスづくり』『学級経営大全』『資質・能力を育てる問題解決型学級経営』『最高の学級づくり パーフェクトガイド』『スペシャリスト直伝! 主体性とやる気を引き出す学級づくりの極意』『スペシャリスト直伝! 成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『スペシャリスト直伝! 学級を最高のチームにする極意』『スペシャリスト直伝! 学級づくり成功の極意』(以上、明治図書)などがある。その他編著書多数。

―本書は、指導力のある教師がどんな原理に則って、どんな指導をしているかを、学術研究や多くの支持を得ている実践をもとにまとめていただいた書籍です。本書のおすすめの読み方があれば教えて下さい。

 既にお読みになった先生方から、「理論と実践が往還しているので、読み進めては戻り、大事な事を確認する、それを繰り返しながら読んでいます」というお声が届いています。
 述べていることのほとんどに研究的、実践的根拠を示しました。すんなりわかるところもあれば、何度も読むことで理解できるところもあろうかと思います。お一人で読み進めていただいても勿論結構ですが、同僚やサークルのお仲間と読書会を開いて議論しながら読み進めていだいても結構です。

―赤坂先生は本書の中で、教師が子どものポジティブな姿勢や能力を引き出すには、「ひきあげる」「養う」の2つを機能させることが大切であると述べられています。本書でも詳しく解説いただいておりますが、まず「ひきあげる」機能とはどういったものでしょうか。教えて下さい。

 とてもシンプルに言うと、「ひきあげる」機能は、子どもの能力を伸ばすことです。みなさんが、「教師の仕事」と捉えていることかもしれません。学校教育には社会から期待された役割があります。その期待に基づき、知識やスキルを身に付けるように指導をすることです。しかし、「ひきあげる」機能は、単独ではそれが機能しないというのがこれまでの研究から指摘されていて、それが本書の中心的な主張になっています。

―もう1点の「養う」機能は、子どもの能力や心情が衰えないように保つものと解説されていますが、具体的にはどのような考え方や取り組みが大切になるでしょうか。

 「養う」機能とは、子どものありのままを受容したり心情に配慮したりすることです。その指導や支援には、「あなたはあなたのままで十分ステキですよ」というメッセージが込められます。
 子どもが自分のことを認め受容するためには、教師との関係性だけでなく、子ども同士の関係をつくり、良好なものにすることも必要となります。子どもは周囲からのフィードバックによって、自分のあり方を見つめていきます。だから、良好な関係性の集団になかにいることによって、自分のことを肯定的に捉えることが可能になります。

―赤坂先生は、信頼される教師に必要なものとして、「6つのソーシャルスキル」を挙げられています。それはどのようなもので、どのように身につけていけばよいでしょうか。

 6つのスキルについての詳細は本書に示してありますので、具体的には、お読みいただきたいと思います。
 スキルを身に付ける場合は、@まずはやってみることAそのチャレンジを振り返ることBそして続けることです。本書でお示しした「アンガーマネジメント」のスキルなどは、難しい場合もあることでしょう。しかし、やってみなければ身に付きません。取り組んでみて、上手くいかなかったらなぜ上手くいかなかったのか分析し、修正して取り組みます。うまくいかなかったら何かを変えればいいのです。
 スキルのひとつとして「6秒ルール」を紹介していますが、うまくいかなかったら8秒にしてみるとか、その場を立ち去って落ち着いてから指導を再開するなどの修正をしてみます。うまくいったら、うまくいった理由を考えてみた上で、自分をしっかりほめます。成功しても失敗しても、振り返りながら続けることで自分なりのコツがつかめることでしょう。

―「機能するクラス」をつくるために必要なこととして、手順の指導としつけを効果的に行うことを挙げていらっしゃいます。学級開きや新学期からはじめる場合、はじめの一歩として、どのようなことから始めればよいでしょうか。

 クラスが安定するためには、手順の指導としつけは必須です。しかし、あまり初日から気負いすぎないことが大事です。まずは、この先生となら楽しくやっていけそうだと思って貰うことの方を優先したいものです。手順の指導としつけのスタートは、まず安心して貰うことです。 

―最後に読者の先生方へ、メッセージをお願い致します。

 先生方がどう自分の力量や存在をどう捉えていようが、子どもたちにとっては教室のリーダーなのです。最初のリーダーシップは、自分がリーダーであることの自覚です。よきリーダーでありたいと思う先生のために書きました。「たったひとつのこと」とは何かをお一人で熟考したり、お仲間と議論したりしていただければと思います。

(構成:及川)

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